REPORTプロジェクトレポート

ヨネックス株式会社様 新潟工場長岡 新築プロジェクト

PROJECT REPORT

新工場建設における取り組み事例の紹介

企画立案から約18か月で工場稼働に導いたマネジメントのポイント

PHOTO:ヨネックス株式会社様 新潟工場長岡 全景(写真撮影:有限会社サタケ)

本工場は「世界的に高まる自社製品の需要」に応え「増産体制」を整えるべく計画されました。クライアントであるヨネックス様(以下、発注者)の目標は自社にとって「最新鋭工場」を建設することであり、「約18か月」で施設を完成させることが御要望でした。工程上ではプロジェクト開始から1年後には工場の屋根をかけ終えなければならないという非常に厳しくタイトなスケジュールであるため、私達は参画を開始して間もない段階から、まず鉄骨業者選定に着手しました。加えて、新工場の設計についても約5か月の短期間で完成させる必要があり、阪急CMが主導的に立案支援をしていくこととなりました。

 その支援内容は、企画段階における「生産施設として適正な規模・階数・階高・動線」に始まり、設計段階における「生産エリアの計画・品質目標の策定支援」「ゲストエリアの計画支援」「工場内外観デザイン方針策定」など、多岐に渡りました。その後の工事段階の支援も経て、最終的に遅延なく18ヵ月後の工場稼働開始を実現へと繋げていくことができました。

 本特集では、我々阪急CMがこのプロジェクトを推進していくに当たり、発注者の要望予算・要望工期内で望まれた品質のものを確実に完成させるため、特に気を配ったポイント(そのおおまかな流れ)について、大きく4つの項目に分けて順に触れていきたいと思います。

※本レポートは「HankyuCM-CHANNEL vol.29」に掲載された内容を再編集したものです。

A . プロジェクトスケジュールとプロジェクト推進体制について

プロジェクトスケジュールの立案

本プロジェクトにおいて、最も重要なのが、マスタースケジュールの立案でした。確実に成り立ち得る工程を描けなければプロジェクトの成功は有り得ません。既に触れたように、我々に与えられた期間は、企画立案から建物竣工まで「約18か月」という非常に短い工期でした。従ってその立案に当たっては、設計工程と共に工事発注にいたるプロセスを視覚化し「遅延なく着工できること」「豪雪地域であるため、初冬までに屋根工事を完了させること」を目標としました。

 実際の運用においては、企画段階から進めるプロジェクトのため、これとは別に日割りスケジュールも用意し、設計段階における工程管理を実施していきました。同時に関係者への素早い情報伝達を実施し、施工者選定開始時期にも遅れが生じないようプロジェクトを推進しました。結果、設計段階では予定より期間を多く要しましたが、大きな手戻りなく実施設計を完了させることができました。

 また、発注工程の立案については、後述の「D.建築生産」でも触れますが、ゼネコン選定より先行して鉄骨業者、杭業者の入札・選定を推進するスケジュールとし、着工後の速やかな部材調達と円滑な工事推進に道筋がつくよう、重点管理していきました。

プロジェクト推進体制の構築

 次に重要となるのがプロジェクト体制の構築です。今回のプロジェクトは、まずヨネックス(株)の新潟工場内に「新工場プロジェクトチーム」が作られ、これを中心に「建屋設計チーム(建築計画担当)」「工程設計チーム(生産設備担当)」が組織されました。

阪急CMを含む建築系各社は「建屋設計チーム」に参加し、発注者側の社員の方をサポートすると共に、設計者の指導に当ることとなりました。発注者における「プロジェクト責任者(複数名)」の方は、これらを横断的に把握できるよう、建屋設計・工程設計チーム双方の会議に御出席頂く中で、発注者側で判断するべき数々の利害調整や技術的調整をして頂きました。阪急CMは、その判断ができる限りスムーズに行えるよう最大限のサポートを実施すると共に、引き続く発注・工事段階においても、これと同様の体制で進めていきました。特に工事段階における「発注者直営工事(生産設備工事)と本体工事の調整」は非常に重要であり、阪急CMが主導する形で未決事項の早期決定を促し、工程遅延が生じないよう注意を払いながら推進していきました。

B . 品質管理について

設計段階の品質管理

設計段階の品質目標は以下の三点を目標としました。

  1. 「コンパクトでフレキシブルな工場計画」策定支援
  2. 「諸元表」による「各種仕様」の一元管理
  3. 「内外観デザイン」等の方針決定支援

 工場計画の立案を支援していくにあたっては、特に将来のレイアウト変更に対応した平面計画に気を配りました。また、屋外設備屋外機については屋上中央部に集約することで、メンテナンス効率化が向上するよう、設計者と共に助言していきました(鳥瞰写真Photo-1参照)。また関係者に対し発注者の技術的要望を伝えるに当たっては、「諸元表」を用いた一元情報管理を助言する一方、工場の天井に吊る設備機器の落下防止へ向け、施工条件を特記仕様書に反映させる等、必要な施策を提言していきました。「内外観デザイン方針」についても、同社の旗艦工場として良い建物を作りたいという発注者の意思もあり、設計者に限らず阪急CMの目線からも適切な助言を求められました。そこで積極的に昨今の事例紹介を行い、施設見学等を実施する中、発注者の知見を高め、早い段階から目指す方向性が決定されるよう支援していきました。

工事段階の品質管理

工事段階の品質目標は以下の三点を目標としました。

  1. 品質管理・発注管理に対する体制構築支援
  2. 天井裏隠蔽部の各部品質確保
  3. 各種モノ決め、内外観カラースキーム等の決定支援

 工事段階においては、ゼネコン内部の組織において、工事現場に対し適正な品質チェック機能が働くよう、第三者品質管理責任者の設置を特に指導致しました。また発注者の目の届きにくい建物の隠蔽箇所の施工品質についても、積極的に品質確保を支援していきました。続いて工事段階の内外観のカラースキームの決定プロセスにおいて特に、外観やゲストエントランス等の重要箇所について、重点的な支援を実施いたしました。具体的には、設計者と共に進めてきた技術的検証を、阪急CMが簡易的なモデリングソフトを用い3次元的に検証し、空間イメージの共有を発注者と図るといった試みです(下図参照)。これら検証資料は設計監理者・施工者が施工図等を確認するにあたり重要な指針ともなりました。こういった取り組みの結果、竣工段階の出来映えについても、発注者より高い評価を頂くことができました。

C.コスト管理について

コスト目標について

 発注者にとってスケジュールや工場の計画とほぼ同様に重要であったのがコストです。発注者予算の組立は、大きく「建築本体工事の予算」「生産機械設備の予算」の2項目に分かれ、阪急CMは「建築本体工事の予算」の管理を行いました。本プロジェクトでは基本計画・基本設計それぞれの終了時点で設計者に概算工事費を算出させ、発注者の合意を得ていくと共に、特に建築本体工事費でウエイトの高い鉄骨工事や杭工事について、各々適正な競争環境下で先行して業者選定を行い、コストの上振れ(高止まり)低減を目標とするなど、設計仕様・発注手法双方から予算内の着工を目指しました。

コスト管理の成果について

 しかし、事前に合意を得たといえ基本設計完了時点の必要想定予算は、「プロジェクト開始前に発注者が独自に想定していた予算」からは、結果的に上昇傾向にあったといえます。この段階では、鉄骨工事、杭工事等の業者選定を阪急CMが同時並行で進めており、競争環境下における工事費低減を目指し、引き続き進めている状況でした。その成果は続く実施設計後のゼネコン選定において表れてきました。阪急CMはゼネコン入札において、鉄骨工事、杭工事といった工種に対し「着工後の手配計画が明確であること」「これらの工事に対するコストオンフィーが確約されていること」を明確に提示し、確実性の高い工事であることを伝えると共に、地場・中堅ゼネコンによる5社競争入札という「高い競争環境」となるように、手配りいたしました。

 結果、各社より意欲的な入札額を受け取ることができ、最終工事落札額は、基本設計概算工事費に対し約27%も低減することとなりました。何よりも大きかったのは、生産設備に割く発注者の予算上の余裕ももたらすことができたことです。この流れで着工へと繋げていき、工事期間中もコスト管理表を用い追加増減費を把握しながら進めた結果、竣工段階においても想定内の費用でプロジェクトを完了させることができたことは非常に大きな成果だったといえます。

D . 建築生産への関わり

 最後に建築生産について触れます。建築生産とは、工事を速やかに着工・推進させるにあたっての必要な段取りのことを指します。ややテクニカルな側面も多いですが、非常に短い発注工期の中、どのようにその時々の状況と折り合いを付け着工へと繋げていったかについて、より詳しく触れておきたいと思います。

鉄骨工事業者の先行決定について

 先に述べたようにプロジェクトでは、何よりも早期に鉄骨工場を予約することを重視しました。当初の阪急CMによる独自の市場調査では、工場予約から製造開始まで半年以上かかる鉄骨工場も散見されました(このままいくと着工しても、半年は工事が進まない可能性があった)。従って阪急CMは、プロジェクト開始直後に、今回の計画規模・形状を予測して仮構造図を設計者に準備させ、入札を開催し鉄骨業者を先行選定しました。

 業者決定後、まずは工場の予約と部材単価確定させました。そして鉄骨工事の総額は実施設計完了後の精積算により確定させていくこととしました。鉄骨の発注については「①材料のロール発注」「②材料を用いた部材の製造加工」「③鉄骨建方工事」の3つに分かれますが、まず①については着工後の鉄骨建方開始時期から逆算して、その4カ月前の6月初旬に発注する必要がありました(上表参照)。①をゼネコン決定後に発注していては、②の製作開始に「1ヵ月」遅れが見込まれたため、設計者による確認申請の構造指摘事項の対応終了後、直ちに「分離発注」しました。一方で「②製造加工」「③鉄骨建方工事」は、発注工期に余裕が見込まれたため、ゼネコンによる「コストオン方式」での発注としました。

杭工事業者の先行決定について

 続いて杭工事については、その発注を「①建設機械の手配」「②部材・工事発注」の2つに分け検討しました。結果、②については、ゼネコン決定後の発注でも8月の着手に間に合いますが、「建設機械」の事前手配に2か月かかる恐れが判明し、これも遅くとも6月初旬には手配しなければなりませんでした。これを解決するため、杭業者についても6月下旬のゼネコン決定を待たずに先行して選定することとし、また入札は価格高止まりを避けるため、2工法分の設計図を用意させて実施しました。これはいずれの工法で決まっても、確認申請出し直しによる着工遅延を回避するためです。杭業者が決定した後は、発注者との間で覚書を締結させたのち「①」の手配を指示し「②部材・工事発注」はゼネコンによる「コストオン方式」での発注としました。

ゼネコン選定について

 ゼネコン選定については、先に述べたように、地場のゼネコン(2社)に対し中堅規模のゼネコン(3社)を加えた5社による指名競争入札としました。価格面では地場のゼネコンが優位に立ちましたが、実績や、技術力についても審査する中、互いの経験値を補いあえるよう、地場のゼネコン(2社)によるJV体制での工事発注としました。

まとめ

 ここまで「スケジュール・体制」「品質」「コスト」「建築生産」と4 つのポイントに分け、プロジェクトの核心へと迫ってきました。特に杭や鉄骨工事等、着工後の早い段階で着手される工種の業者を先行決定して準備を進めたことは、様々な面で「本体工事着工後の速やかな工事推進」を確実なものとし、これにより「18ヵ月」でのプロジェクト完了に向け道筋がついたと言えます。ただそうした成果の最大の要因は、やはり発注者であるヨネックス様が私達阪急CMの取り組みに対し全幅の信頼を寄せて頂いたことにあるといえます。ですから、ヨネックス様には我々からも大変強く感謝致しますと共に、ここまでの内容を以下3つにポイントを整理して本特集のまとめとしたいと思います。

本プロジェクトの成果

以下3点が本プロジェクトの最大の成果です。

  1. 非常に厳しいスケジュールの中、分離発注も採用しつつ、竣工期日に建物を完成させることができた!
  2. 基本設計概算費より27%近い工事費の低減を達成した!
  3. スピーディーな合意形成により最新鋭の工場に相応しい施設を実現、発注者にご満足頂くことができた!

ありがとうございました。


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