榊原温泉 湯の瀬 ラムちゃんパーク PROJECT REPORT[PART.1]
PROJECT REPORT
DBO方式(公設民営)への理解
プロジェクト推進の基盤を固める
地域振興の場として親しまれてきた温浴施設の建替え。主に3つの視点での課題がありました。
今回は課題01「津市で初めてのDBO方式をどのように理解してもらうか?」について触れていきます。
DBO方式におけるリスクの整理
阪急CMが本事業に参画した際、本事業は市の事前検討によりDBO方式(※)で実施されることが決定されていました。しかし、津市では公共事業がDBO方式で実施された実績がなく、DBO方式に適した運用ルールや規定がありませんでした。そのため、最初にDBO方式に内在する事業リスクを整理することから始めました。本事業はDBO方式という特性上、利害関係の異なる事業者の集合体であり、建設期間だけでなく、運営期間中のリスクも想定しておく必要があります。
リスクが顕在化すると、スケジュールやコスト、施設運営に大きな影響を与え、事業計画そのものにも大きな影響を与えかねません。各関係者が負担するリスクの整理を行うことは責任の所在を明確にすることであり、スムーズなプロジェクト推進に最も必要とされる事項の一つです。
内在するリスクはプロジェクトの進捗とともに変化するため適時見直す必要がありますが、予防活動の適切な実施はプロジェクト推進の必須事項です。
(※)DBO方式 …Design(設計)-Build(建設)-Operate(運営管理)の略で、公共団体が資金調達し、民間事業者に設計・建設・運営管理を一体的に委託して実施する官民連携の方式の一つ。
適切な民間事業者の選定
本事業は、公共事業としての高品質な施設建設とともに民間事業者のノウハウを最大限に活用する柔軟な事業計画が両輪となり、地域の健康増進に寄与し、合わせて観光振興に寄与することが求められました。そのため、本事業成功の可否に際し、地域にとって最も適切な民間事業者を選定することが最重要課題となります。事業者には、市が直接本事業のPRも兼ねて異なる事業分野を得意とする民間事業者へのサウンディングを複数社行い、阪急CMはCMR(※)として本事業により市および民間事業者が互いにメリットを享受できる環境整備を行いました。
また、民間事業者を選定する審査委員会には、市関係者の他、地元団体の代表者や事業計画に精通する有識者にも参画いただき、CMRとして施設建設より施設運営に重きを置いた選定方法や選定基準の整理、調整を適時行いながらプロジェクトを推進するよう心掛けました。
※CMR(個人を指す場合はCMr)…コンストラクションマネジャーの略
既存ルールとの不整合の解消
公共施設としての高い品質を確保するため、行政において様々なルールや仕様書等が定められています。しかし、民間事業者では公共施設のルールとは異なる方法で同等の品質を確保するための独自のノウハウがあります。そのため、公共事業として必ず守らなければならないルールと民間事業者に運用を委託しても問題のない内容を整理する必要がありました。
例えば、営繕課による設計・工事監理のルールや契約課による会計監査のルール等です。担当部署に対して、公共基準と民間基準の違いを説明するとともに、同等の性能やアカウンタビリティを確保できるマネジメント手法の整理・調整を行いました。DBO方式を初めて採用する市にとっては、まずは理解いただくことから始まりましたが、関係各所の柔軟な対応によりスムーズにプロジェクト推進を図ることができました。
次回:市・地元・民間事業者の目標設定
次回レポートは「課題02 利害の異なる3者が一つの事業を成功させるには?」についてお届けします。お楽しみに!