REPORTプロジェクトレポート

ヨネックス株式会社様 新潟工場長岡 新築プロジェクト(CM選奨2017)

PROJECT REPORT

新工場建設における取り組み事例の紹介

企画立案から約18か月で工場稼働に導いたマネジメントのポイント

PHOTO:ヨネックス㈱ 新潟工場長岡 全景(写真撮影:有限会社サタケ)

 本工場は「世界的に高まる自社製品の需要」に応え「増産体制」を整えるべく計画されました。クライアントであるヨネックス様(以下、発注者)の目標は自社にとって「最新鋭工場」を建設することであり「約18か月」で施設を完成させることが御要望でした。

 本特集では、我々阪急CMがこのプロジェクトを推進していくに当たり、発注者の要望予算・要望工期内で望まれた品質のものを確実に完成させるため、特に気を配ったポイント(そのおおまかな流れ)について、大きく4つの項目に分けてレポートしていきたいと思います。

A . プロジェクトスケジュールと推進体制

プロジェクトスケジュールについて

 プロジェクトにおいて最も重要なのがマスタースケジュールの立案です。我々に与えられた期間は企画立案から建物竣工まで「約18か月」という非常に短い工期でした。従って立案に当たっては、設計工程と共に工事発注にいたるプロセスを視覚化し「豪雪地域であるため、初冬までに屋根工事を完了させること」をひとつの目標としました。
 設計段階のスケジュールマネジメントにおいては、日割りスケジュールも用意し、関係者への素早い情報伝達を心掛けると共に、施工者選定開始時期にも遅れが生じないよう注意いたしました。発注工程の立案については、後述の「D.建築生産」でも触れますが、ゼネコン選定より先行して鉄骨業者、杭業者の入札・選定を推進するスケジュールとし、着工後の速やかな部材調達と円滑な工事推進に道筋がつくよう、重点管理していきました。

プロジェクト推進体制について

 次にプロジェクト体制です。今回のプロジェクトは、まずヨネックス(株)の新潟工場内に「新工場プロジェクトチーム」が作られ、これを中心に「建屋設計チーム(建築計画担当)」「工程設計チーム(生産設備担当)」が組織されました。
 阪急CMをは「建屋設計チーム」に参加し、クライアント様が発注者としてプロジェクトの数々の利害調整や技術調整をスムーズに判断できるよう最大限のサポートを実施いたしました。特に発注者直営工事(生産設備工事)と本体工事の調整に関わる未決事項の早期決定を促すよう心掛け、プロジェクト体制が円滑に機能するよう細心の注意を払いながら支援を行いました。

B . 品質マネジメント

設計段階の品質マネジメントについて

 計画段階では特に将来のレイアウト変更に対応した平面計画に気を配りました。関係者に対し発注者の技術的要望を伝えるに当たっては「諸元表」による一元管理を心掛けました。内外観デザイン検討も同社の旗艦工場として良い施設を作りたいという方針を受け、阪急CMとしても適切な助言を心掛け、積極的に事例紹介や施設見学を主催し、早い段階から目指す方向性を確定していけるよう支援を実施していきました。

工事段階の品質マネジメントについて

 工事段階では、ゼネコン内部の第三者的な品質管理責任者の設置をゼネコンへ要請し、発注者の目の届きにくい建物の隠蔽箇所の施工品質も重視しました。内外観のカラースキームの決定プロセスにおいても、ゲストエントランスなど重要な箇所については特に支援を実施いたしました。例えば設計の検証内容を、阪急CMが簡易的なモデリングソフトを用い3次元的に検証するデザインマネジメントも積極的に実施いたしました。結果的な出来映えについても高い評価を頂くことができました。

C.コストマネジメント

コスト管理について

 基本計画・基本設計それぞれの終了時点で設計者に概算工事費を阪急CMのデータベースと照らし合わせて報告を重ね、発注者の合意を得ていくプロセスを忠実に実施いたしました。ただそれだけではなく、特に建築本体工事費でウエイトの高い鉄骨工事や杭工事について、各々適正な競争環境下で先行して個別に業者選定を行い、コストの上振れ低減(高止まり低減)を目標とするなど設計仕様・発注手法双方から予算内の着工を目指していきました。

コスト低減へ向けた取り組みの成果

 ゼネコンの競争入札においては、鉄骨工事、杭工事といった工種は「着工後の手配計画が明確であること」「これらの工事に対するコストオンフィーが確約されていること」を明確に提示し、確実性の高い工事であることを参加各社へ伝えました。結果として最終落札額は、基本設計概算工事費に対し約27%低減という結果となりました。何よりも大きな成果は生産設備に割く発注者の予算に余裕をもたらすことができたことといえるでしょう。

D . 建築生産への関わり

 最後に建築生産について触れます。建築生産とは、工事を速やかに着工・推進させるにあたって必要な調達マネジメントのことです。ややテクニカルな側面ですが、触れておきたいと思います。

鉄骨工事業者の先行決定について

 プロジェクト開始当時、ヒアリングでは工場予約から製造開始まで半年以上かかる鉄骨工場が散見され、着工しても工事が進まない危険性を重視しました。阪急CMは、プロジェクトを開始して直ちに仮の構造図を設計者に準備させ、入札を開催し鉄骨工場を確定しました。ただ「材料のロール発注」だけは、ゼネコン決定後にそのゼネコンに発注させていては間に合わない状態でしたので、鉄骨数量を確定させたのち、ヨネックス様に先行発注いただく流れとしました。一方その材料をつかった鉄骨部材の製造加工・鉄骨建方工事は、期間的に余裕があったことから、その工場をゼネコンの下請けに入れ、統括管理費を上乗せし、ゼネコン自身に鉄骨の制作や建方工事を指揮監督させる「コストオン方式」の発注としました。

杭工事業者の先行決定について

 杭工事も、その建設機械の事前手配に当時時間がかかる状況にあり、ゼネコン決定を待たずに先行確定させる必要がありました。阪急CMは、入札価格の高止まりを避けるため2工法分の設計図を用意し選定をすすめ、杭業者決定後は建設機械の準備手配を速やかに指示し、部材発注・杭工事については、鉄骨工事と同様「コストオン方式」での発注としました。

ゼネコン選定について

 ゼネコン選定については、先に述べたように、地場のゼネコン(2社)に対し中堅規模のゼネコン(3社)を加えた5社による指名競争入札としました。価格面では地場のゼネコンが優位に立ちましたが、実績や、技術力についても審査する中、互いの経験値を補いあえるよう、地場のゼネコン(2社)によるJV体制での工事発注としました。

本プロジェクトの成果

 以上「スケジュール・体制」「品質」「コスト」「建築生産」と4 つのマネジメントに分け詳しく触れてまいりました。本プロジェクトの成果は次の三点に集約し、本レポートのまとめとしたいと思います。

★18か月という非常に短いスケジュールで無事施設を竣工させることができた
★基本設計概算費より27%近い工事費の低減を達成した
★スピーディーな合意形成で最新鋭の工場に相応しい施設を実現することができた

ヨネックス様にとって最新鋭の工場を「建築計画・調達マネジメント」の視点で主体的にハンドリングし実現へと導けたことが、私たちにとって何よりの誇りです!



御精読ありがとうございました。
  ー Thank you for your reading! -

本レポートは「HankyuCM-CHANNEL vol.29」に掲載された内容を再編集したものです。


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