REPORTプロジェクトレポート

東京第一ホテル鶴岡様 耐震改修リニューアルプロジェクト(CM選奨2019)

PROJECT INTERVIEW

多くの工事が複雑に入り組む計画!!

設計段階から合理的なマネジメントでプロジェクトを推進!

PHOTO:中央右:長坂 副社長/中央左:木村 総支配人 左:阪急CM 林 / 右:阪急CM 野田

 株式会社庄交コーポレーション様は山形県庄内地方を拠点にホテル・観光・交通事業など幅広く手掛けられ、なかでも東京第一ホテル鶴岡は阪急CMのグループ会社「阪急阪神第一ホテルグループ」のフランチャイズホテルでもあります。本インタビューでは、耐震改修やリニューアルに至った経緯や当社のCM業務の感想などをお聞きしました。

CLIENT

  • 長坂 紳一

    株式会社 庄交コーポレーション

    取締役副社長

  • 木村 節

    株式会社 庄交コーポレーション

    東京第一ホテル鶴岡 総支配人

INTERVIEWER

野田 浩司・林 秀行

阪急コンストラクション・マネジメント

東京本店



*本インタビューは2020年2月12日に行われました。掲載されている情報は取材当時のものです。

減築の可能性があった。減築せずに耐震補強できるという確証がスタートだった。

まずは計画の背景をお聞かせください。

 東京第一ホテル鶴岡は、オープンから30年超が経過し、施設が老朽化していました。特にホテル本館は旧耐震基準による建物で、耐震補強は緊急の課題でした。当初、4階以上は減築しないと補強が成立しない可能性もありました。それでは客室がなくなり本末転倒ということで、元施工者(清水建設)の構造設計担当者の方に検証を依頼したところ、なんとか減築しない方法でいけるという確証をつかみました。リニューアルの全体構想は、まさにここから始まったといっても過言ではありません。

緻密な資金計画を組み立て金融支援を取得し、特別目的会社を設立へと繋げた!

計画を進める上で、特に重視されたことをお聞かせください。

 まずは資金計画です。いかにプロジェクトの資金調達をするか。そこで辿り着いたのが不動産の流動化であり、特別目的会社(SPC)の設立でした。プロジェクトを前進させる一方で、不動産売却資金を取得し債務を圧縮する手法を取ったのです。そして、一般財団法人民間都市開発推進機構(以下、民都)から融資を受けるため、国土交通省の民間誘導施設等整備事業計画の認定を受けました。実はこの認定を受けたのは私達のプロジェクトが全国で初でした。この認定による民都の融資と共に、取引銀行からの支援による不動産特定共同事業法(不特法)を活用した資産流動化、およびノンリコースローンの組成等によって資金を賄う手法を構築し、特別目的会社(SPC)の設立へと繋げていきました。

複数の会社が参画する複雑な計画。全体を統括するプロジェクトマネジャーの必要性を感じた。

阪急CMを採用された背景をお聞かせください。

 本館の耐震補強の設計を元施工者である清水建設に打診していましたが、ホテル全体のリニューアル工事はインテリアデザイナーの240デザインスタジオに依頼していました。しかし別々に検討を進めながら同時期に工事着手するという条件下で発注区分・工事計画・工程の策定、さらには必要事業費の策定といった課題が山積しており、建設部門のマネージャーの必要性を痛感していました。そんな折、あるセミナーで阪急CMのプレゼンを拝見し、これだと思い、プロジェクトマネジメント業務を依頼させていただくことになりました。

プロジェクト体制の構築からリニューアルメニュー・発注方針の策定まで全てをお任せした。

CM業務についての感想をお聞かせください。

設計段階の進め方について

 参画いただいたときは既に設計も施工も大まかな参画者は出揃っていたのですが、各社の役割分担が曖昧で、リニューアルに至っては「誰が設計するの?」という感じでした。そこで阪急CMが、まずデザイナーの事務所と協議してリニューアル側の設計体制を固めてくれ、「必要予算の把握の必要性から、まずは、基本設計まで進めること」を全体の指針として示してくれた。その後の検証で必要予算と工程案が提示され、結局、要望の3割はやらなくなるわけですが、それでも実際の工事の進め方にはかなりの合理化が必要で、そう単純ではないことをCMさんの資料を見て痛感した次第です。

実施設計から工事発注まではいかがでしたか?

 最終的に、工事は清水建設、佐藤工務、阪急建装、直営工事の四つに区分し、さらに本館とアネックスで工事区分を分けたことから、全体として10以上に及ぶ工事の分離発注となりました。設計の取りまとめにおいては、各工事業者に対する見積設計図書をそれぞれ準備する必要から、取りまとめて頂くにあたってはかなり手間をおかけしたかもしれません。

 ただ、ここでも精力的に動いて頂けたと思います。例えば、全体工事区分の可視化・補助金や工事区分に対する合理化提案、あるいは製作に時間がかかるカーペットの先行発注や、ホテルの閉鎖計画の整備や行政申請の全体統括など、本当に細部にわたり見落としがないようにしていただけたと思っています。特に施設の設計に全関係者が集中している中、営業しながらのリニューアルですから館内既存家具の移設・処分計画の呼びかけや一時的な仮設フロントの計画をデザイナーと連携して整理して頂くなど、まったなしの計画で手戻りがないよう実効性のある計画にまとめていただけたと感じています。

工事段階ではいかがでしたでしょうか?

 この段階から特定目的会社(SPC)側のアセットマネジャーとも連携して動いて頂くことが増えたかと思います。予算内、予定工期内での工事推進の必要性から阪急CMにはアセットマネジャーのいる東京側でも密に動いて頂きました。特に多種にわたるスケジュール管理は、非常に助かりました。工事費を支払う側も、細分化される工事が各々いつまでに終わり、いつが検査で、いつ支払えばよいか分かりやすく明確にして頂けました。この、CM側で準備頂いた資料の数々は竣工後の監査でも役立っています。

このプロジェクトは私達だけでは出来なかった。お願いして本当によかったと思います。

オープンを迎えられ、その後いかがですか?

 リニューアル後、複数のホテルが競合としてオープンしましたが、ホテルの稼働率はむしろ上がりました。ネットの口コミでも好評ですし、競合ホテルの開業もあいまって駅前は活性化され、相乗効果が生まれています。私達のホテルはバンケットをもち、空港からのリムジンバスもホテルに直結するので、その意味で地域の顔でもあります。こうした事業をやり切ったということで近隣行政の方の見学要望もあったりと、様々な反響がありました。

最後に阪急CMについて感想をお聞かせください。

 私達は何より資金計画を重視しましたが、それと対をなす建設計画については、多くの工事が入り乱れる複雑な計画でした。ですから終わってから振り返ると、これは私達だけではマネジメントできない、いやできるはずがない、本当にマネジメントを委託してよかったと思っています。全国にも同じ事業傾向の事業者さんはたくさんいるはずで、様々な場所で皆さんのノウハウはこれから多くの活躍の場を得ていくのではないかと感じています。

本日は貴重なお時間をありがとうございました。

ありがとうございました。


PROJECT DATA

計画名 :東京第一ホテル鶴岡
     耐震改修リニューアルプロジェクト
計画認定:民間誘導施設等整備計画認定事業
     (国交省 認定は全国初)
設計期間:2016年8月~2017年8月
施工期間:2017年9月~2018年7月
設計者 :清水建設(耐震補強設計)
    :240DS 総設計共同企業体(リニューアル設計)
施工者 :清水建設 (耐震補強工事 ほか)
    :佐藤工務 (リニューアル工事 ほか)
    :阪急建装 (FFE工事)
監修者 :240 Design Studio(デザイン監修)
CMR:阪急コンストラクション・マネジメント

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