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コロナ禍における建設コストの推移

2021.03.16

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コロナ禍・東京五輪延期など激動の日本経済

その建設物価への影響を複数の指標から分析します

はじめに

 新型コロナウイルスの感染拡大による東京オリンピック延期やインバウンドの減少、さらに各地で多発する自然災害と困難な状況が続く中、建設プロジェクトに於いても「感染拡大防止対策」「新しい生活様式」など、今までにない様々な対応が必要になっている状況です。現在、建設コストへのコロナ禍による影響はまだ途中段階であると思われますが「建築費指数」「建築・設備主要資材価格動向」「労務費の推移」について考察を交えご紹介いたします。

本レポート阪急CMが発行する阪急CM CHNNNELvol.36(2021年1月発行)に掲載された内容を再編集したものです。

近年の建築費指数の推移(グラフ1)

緊急事態宣言を境に下降傾向に転じたが、以降概ね横ばい傾向

 鉄筋コンクリート造(以下RCという)、鉄骨造(以下Sという)共に、新型コロナウイルスの緊急事態宣言を境に、下降傾向に転じたが、緊急事態宣言解除後以降では概ね横ばい傾向が見られます(2020年7月時点RC指数118.5~120.7、S指数116.6~118.1/基準は2011年=100)。
 グラフ1では、建設物価調査会の統計データによる建築費指数は、消費税増税の影響により需要が落ち込むタイミングにWHOによる緊急事態宣言が重なり、下降傾向に転じましたが、概ね5~6月を底に下げ止まり、以降横ばい傾向が続いていることを読み取ることができます。これにはGoToトラベルキャンペーン等の政府の施策や企業努力など様々な要因が考えられますが、新型コロナウイルスの感染拡大が再燃するなかで、今後の建築費の動きを注視する必要があります。

建築・設備主要資材価格動向(グラフ2)

緊急事態宣言を境に下降傾向に転じたが、以降持ち直しや横ばいの傾向

 新型コロナウイルスの緊急事態宣言を境に穏やかな下降傾向であったが、緊急事態宣言解除後以降ではスクラップの持ち直しや概ね横ばいの動きが見られます。グラフ1の建築費指数の推移と比較すると、グラフ2では2010年以降スクラップ以外の振れ幅が小さく横ばい傾向が強い。このことから近年の建築費指数の動向には、資材価格よりも、労務費や施工会社の諸経費が大きく影響していると読み取ることができます。

ガソリン

世界的に新型コロナウイルスの感染拡大傾向が続いているなか、先行き不安は払拭できず現状を底値圏とした横ばい推移の見通し
◎2020年01月 135円/㍑ 
◎2020年05月 114円/㍑(↘)
◎2020年11月 122円/㍑(↗)

スクラップ

新型コロナウイルス感染拡大による工場休止や工事中断が相次ぎ荷動きは低調であったが、在庫調整による需給のタイト感が出てきており、先行き横ばい推移の見通し。
◎2020年01月 1.65万円/t 
◎2020年05月 1.05万円/t(↘)
◎2020年11月 1.65万円/t(↗)

鉄筋・鉄骨

新規需要は低調に推移しており、市況は下落基調が続いているがスクラップ価格の回復を受け目先強含みの見通し。
◎鉄筋・・・
2020年01月 6.8万円/t
2020年06月 6.3万円/t(↘)
2020年11月 6.5万円/t(↗)
◎鉄骨・・・
2020年01月 8.2万円/t
2020年06月~2020年11月 7.4万円/t(↘)

生コンクリート

出荷量は新型コロナウイルス感染拡大の影響による着工遅れや工程遅延もあり減少が続いている。協組は2020年4月受付分から1,000円の値上げを打ち出しているが浸透には時間を要する見込みであり、先行き横ばい推移の見通し。
◎2019年09月~2020年08月 1.40万円/m3 
◎2020年09月~2020年11月 1.41万円/m3(↗)

型枠(コンパネ)

新型コロナウイルス感染拡大の影響による更なる需要低迷により、過去にない低水準の入荷が続き、需給にタイト感が出てきており目先強含み推移の見通し。
◎2020年01月 1,300円/m2 
◎2020年04月 1,270円/m2(↘)
◎2020年08月 1,200円/m2(↘)
◎2020年09月~2020年11月 1,170円/m2(↘)

600vビニル絶縁電線(IV)

都市部の大型物件を中心に堅調に推移していた需要は、新型コロナウイルス感染拡大による工程遅延などから落ち込みも見られるが、先行き横ばい推移の見通し。
◎2020年01月 22.5円/m
◎2020年05月 20.4円/m(↘)
◎2020年08月 21.8円/m(↗)
◎2020年11月 22.5円/m(↗)

配管用炭素鋼鋼管(SGP)

新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受け需要は低迷しているが、生産調整等により価格に変動なく先行きも横ばい推移の見通し。
◎2019年09月~2020年11月 4,100円/本

主要都市の鉄筋工事、型枠工事の市場単価(労務費)の推移(グラフ3)

 グラフ3では、労務費の目安は2016年11月頃より長らく概ね横ばいの推移が続いていましたが、2019年5月頃より東京都心部では需給の緩和や、工事量減少の見通しから専門工事業者間での受注競争が活発になり下落傾向に転じたと読み取ることができます。
 新型コロナウイルスによる先行きの不透明感から、今後受注競争が活発になるとの見方もありますが、現状では概ね現行価格が維持され一部弱含み推移となる見通しです。ただし本稿執筆中である2020年12月時点では、名古屋に僅かな下降傾向が見られましたが、大阪は横ばい推移が続いており殆どデータに影響は表れていません。

おわりに

 コロナ禍の現在、建設コストへの影響が大きく注目されていると思いますが、本稿でご紹介した「建設コストの推移」では今のところ2008年のリーマンショック後のような急激な変化を確認するには至っておりません。
 ただし、今後の建設プロジェクトにおいては、コロナ終息後も根付いて行くと思われる「新しい生活様式」への適応や、受注競争及び、サプライチェーンの世界的変化などによりコストや工期への影響が懸念されます。先行きの不透明感が強まるなか、懸念事項を解決し建設プロジェクトを成功させるためには、最新の情報を得ること、そして何よりその活用方法が重要と考えます。
 当社では公共・民間問わず、様々なプロジェクトのCM業務・工事費査定業務に携わっており、「最新の建設プロジェクトの進め方」及び「最新の建設コスト情報」にてサポートすることが可能です。建設プロジェクトを進めるにあたり、お困りのことがございましたら是非お声がけいただきたいと思います。

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